「会社を辞めたいけど言えない」
そんな若者の心の叫びに寄り添い、コミカルなSNS発信や手厚いサービスで急成長していた
退職代行サービス「退職代行モームリ」。
その運営会社の代表らが2月3日、弁護士法違反の疑いで警視庁に逮捕されました。
「えっ、モームリって有名だよね?」「使おうと思ってたのに…」という声も多く聞かれます。
なぜ、人気サービスのトップが逮捕される事態になったのか。
事件の裏側には、法律の抜け穴を突こうとした「お金の動き」がありました。
今回は、その事件の全容と今後の予測についてわかりやすく徹底解説していきます。
1. 何が起こったのか?(事件の概要)
逮捕されたのは、退職代行モームリを運営する株式会社アルバトロスの代表取締役・谷本慎二容疑者(37)と
妻で従業員の谷本志織容疑者(31)の2人です。
容疑の内容は「弁護士法違反(非弁周旋(違法な紹介)」です。
簡単に言うと、「弁護士資格がないのに、法律トラブルを抱えた客を弁護士に紹介し、その見返りとして報酬(紹介料)を受け取っていた」という疑いです。
【警察が掴んだ具体的な手口】
- 集客
- モームリに退職希望者が相談に来る。
- 紹介
- モームリ側が「会社との交渉(未払い残業代請求など)が必要な案件」だと判断すると、提携している弁護士事務所を紹介する。
- 送金
- 紹介を受けた弁護士事務所は、紹介料として1件あたり16,500円をモームリ側に支払う。
ここでポイントとなるのが、この「16,500円」の受け渡し方法です。
そのまま「紹介料」として渡すと完全にアウトなため
彼らは「労働環境改善組合」という労働組合のような団体を間に挟んでいました。
弁護士側は、この組合に対して「賛助金(寄付のようなもの)」や「広告費」という名目でお金を振り込んでいました。
しかし警察は、この組合は実質的にモームリ側の財布であり
「名目を変えただけの違法な紹介料(キックバック)だ」と判断したのです。
容疑者らは「弁護士法違反になるとは思っていなかった」と容疑を否認していますが
警察は2025年10月に家宅捜索を行うなど、慎重に捜査を進めていました。
2. 何が問題なのか?(法律の壁)
「お客さんを弁護士に紹介して、何が悪いの? 親切じゃない?」
そう思う方もいるかもしれません。
しかし、日本の法律(弁護士法)では、
この行為は極めて重いルール違反とされています。
① 非弁行為(ひべんこうい)と非弁周旋(ひべんしゅうせん)
法律では、「報酬を得る目的で、弁護士以外の人が法律事件(示談交渉など)に介入したり、弁護士を紹介(周旋)したりすること」を固く禁じています。
なぜなら、法律の知識がないブローカー(仲介屋)が間に挟まると
以下のようなリスクがあるからです。
- 質の低下
- 報酬が高い弁護士ばかり紹介され、実力のない弁護士に当たる可能性がある。
- 搾取
- 紹介料が上乗せされ、利用者の費用が高くなる。
- 不適切な解決
- ブローカーが利益優先で話をまとめようとし
依頼者の正当な権利(本来もらえるはずの慰謝料など)が無視される。
- ブローカーが利益優先で話をまとめようとし
今回の場合、モームリは「退職代行」という看板を掲げていますが
実態として「弁護士への紹介屋」として裏で利益を得ていたとみなされたのです。
② 「隠れ蓑」としての労働組合
- 民間企業運営
- 退職の意思を伝えるだけ。(交渉はできない)
- 労働組合運営
- 会社と交渉ができる。
- 弁護士運営
- 裁判や全ての法的手続きが可能。
モームリは民間企業ですが、「労働環境改善組合」と提携していると公表していました。
これにより「ウチは組合と組んでるから交渉も安心ですよ」とアピールしていたわけです。
しかし、今回の逮捕容疑が事実であれば、この組合は労働者のための団体ではなく
「違法な紹介料を受け取るためのトンネル組織(受け皿)」として機能していたことになります。
「全てオープンにやっている」「弁護士との金銭授受はない」とメディア取材で語っていた代表の言葉とは裏腹に
裏では巧妙なスキームでお金が回っていた。
ここが悪質性が高いと判断された大きな要因でしょう。
3. 今後の予測と私たちへの影響
① 「モームリ」はどうなる?
代表者が逮捕されたことで、サービスの継続は極めて困難になるでしょう。
信用は失墜し、現在進行中の案件もストップする可能性があります。
また、もし有罪となれば、法人としての責任も問われます。
「24時間365日対応」「実績4万件」という輝かしい看板は、崩れ去る危機に瀕しています。
② 弁護士側の責任追及
忘れてはならないのが、お金を払っていた「弁護士側」の責任です。
弁護士法では、弁護士が違法業者から紹介を受けること(非弁提携)も禁じています。
今回、二つの弁護士法人に家宅捜索が入っています。
もし関与が認定されれば、関わった弁護士は「業務停止」や「退会命令(弁護士資格を失う)」といった非常に重い懲戒処分を受けることになります。
③ 退職代行業界への規制強化
退職代行サービスは、急激な需要に対して法整備や監視が追いついていない「グレーゾーン」が多い市場でした。
今回の事件を機に、警察や弁護士会による監視の目は一気に厳しくなります。
- 「労働組合」を名乗るだけの偽装団体の摘発
- 民間業者と弁護士の癒着の調査、これらが進み怪しい業者は淘汰されていくはずです。
④ 利用者はどうすればいい?
これから退職代行を使おうと考えている方は、以下の点に注意が必要です。
- 「民間企業」の限界を知る
- 民間業者は「辞めます」と伝えることしかできません。
有給消化や未払い賃金の交渉を頼むと、違法行為(非弁行為)になるリスクがあります。
- 民間業者は「辞めます」と伝えることしかできません。
- 「提携」の言葉に騙されない
- 「弁護士監修」「組合提携」と書いてあっても
実態が伴っていないケースがあることが今回露呈しました。
- 「弁護士監修」「組合提携」と書いてあっても
- 確実なのは「弁護士」への直接依頼
- 会社と揉めそう、確実にお金を取り返したい場合は、代行業者を挟まず、最初から労働問題に強い弁護士に直接相談するのが一番安全で、結果的にコストも適正になる場合が多いです。
まとめ
「退職代行モームリ」の逮捕劇は、急成長する退職ビジネスの歪みが表面化した事件と言えます。
「辞める権利」を行使しやすくしたという点で、退職代行サービスには一定の社会的意義がありました。
しかし、それが「法律を無視した金儲けの道具」になってしまっては、元も子もありません。
今回の事件は、コンプライアンス(法令順守)の重要性を改めて突きつけています。
「みんな使っているから」「有名だから」で安心するのではなく、サービスの中身や仕組みを正しく理解することが、私たち消費者にも求められています。
今後の捜査の進展と、業界の健全化に向けた動きに注目していきましょう。


警察の発表によると、このような仕組みでお金が動いていたとされています。